2022年7月のことば

火の敵は水である。水の敵は火だ。二つはお互いに敵対しているけれど、その間に鍋を置くと、鍋の中に美味を生じる。私は、鍋のような人生を送りたい。高峰秀子

高峰秀子さんは昭和の大女優で、芸能界引退後はエッセイストとして活躍しました。
「火の敵は水である」という断言、「敵対」という強い言葉。作者がこんな表現を使うのは、「怒り・嫌悪」の感情がとりわけ危険であると示すためでしょう。当事者のみならず周囲も巻き込んで不幸にしてしまう。しかし作者は、あえてそれに立ち向かおうと決意します。
私だったら「仲が悪いんだから放っておけよ」と言ってしまいそうです。作者はどうして間に入ろうとするのでしょうか。
ここからは私の妄想です。作者は人の美点を見抜く力が優れていたのだと思います。この人はすばらしい、あの人もすばらしい、なのにお互いが仲悪く力を合わせることができない。何と勿体ない、残念で見ていられない、それならば私が間に入って、皆が幸せになれるよう微力ながら力をつくしたい。
鍋のような人生、尊い生き方だと思います。作者の素晴らしい人柄に触れて、私も心が温かくなりました、鍋だけに。