2022年8月のことば

どうかこのめぐみが わたしに わたしたちに もろもろのいのちたちに あまねくひとしくゆきわたり 目ざめたいという心をおこさせて あのやすらかな国へいくことができますように。

漢文は正信偈の最後にも使われていて、私たちに大変なじみの深いフレーズです。ふだんは漢文を日本語に機械的にあてはめて受け止めていましたが、この日本語訳に出会った時、私は雷に打たれたように思いました。コトバのプロの手にかかると、こんなに瑞々しい表現になるのかと。
翻訳したのは詩人の伊藤比呂美さんです。著書によれば、老いと病で父母の死を意識するようになった時期に、父母に勧めるつもりで仏典を読み始めたところ自分自身が魅了されてしまい、現代語に翻訳するようになったそうです。
「平等施一切」では、一切という存在を、「わたし・わたしたち・もろもろのいのちたち」と言い換えています。ほとけのめぐみが、この私に届いている。その気づきと喜びをかみしめて、めぐみの対象は次々と広がっていきます。
そして誰も漏れることなく共に救われていく壮大な世界、すなわち浄土へ参りたいと思う心が呼び起こされるのです。